2025.11.01

ICカード導入ガイド | NFCの基礎知識や活用例を解説

ICカード・NFCとは

NFCとは、非接触でデータをやり取りするための国際規格です。交通系ICカードやクレジットカードのタッチ決済、スマートフォンをかざすだけの非接触決済など、私たちの生活に身近な形で使用されています。NFCはビジネスでも活用が進み、勤怠管理や顧客管理といった業務の効率化にも導入されています。

本記事では、NFCの基礎知識やメリット、導入事例、導入の際の注意点などをわかりやすく解説します。

ICカードの導入については、専門スタッフがご相談を承っております。「自社サービスにあったICカードを知りたい」「MIFAREとFelicaのどちらが良いか迷っている」といったご相談は、お気軽に以下までお問い合わせください。

ICカードに使われているNFCとは

光るICカード

NFCは、ICカードに用いられる無線通信技術で、NFCに対応したスマートフォンにも使われるなど、幅広いシーンでの活用が進んでいます。ここでは、NFCの基本的な仕組みや規格の違い、機能について整理し、混同されやすいFeliCaとの違いも説明します。

NFCとは?

NFC(Near Field Communication)は、短波HF帯(13.56MHz帯域)の電波を使用した非接触通信技術の規格で、ソニー株式会社とNXPセミコンダクターズ社によって共同開発されました。数cm程度の近距離でかざすだけで無線通信ができ、スピーディーかつ安全なデータ交換が可能です。スマートフォンとの連携やペアリング設定も簡単にできることから、現在では交通系ICカードやクレジットカード、スマートフォンなどに搭載され、決済や認証、情報共有などに広く活用されています。

世界規格NFCの仕組み・機能

NFCは2003年12月にISO/IEC 18092として国際標準規格に承認され、国やメーカーを問わず幅広い機器やサービスとの互換性を持っています。グローバルに展開する企業で多く導入され、パソコンや家電、デジタルサイネージといったさまざまな機器で利用されています。

NFCには、次の4つの機能を備えています。

・カードエミュレーション機能:スマートフォンなどのデバイスが、ICカードとして動作する機能です。スマートフォンだけで交通機関の改札を通過したり、社員証をスマートフォンに搭載したりすることが可能です。

・リーダー/ライター機能:NFCが搭載されたデバイスで、さまざまな非接触ICカードやタグなどの情報を読み取ったり、書き込んだりできます。たとえば、商品タグに記録されたデータを読み取って在庫を管理したり、ICカードの残高や履歴などをスマホで読み取り・書き換えができたりします。

・P2P(ピアツーピア)機能:2台のデバイス間で情報を直接交換する通信機能です。スマートフォンなどのNFC搭載の機器同士を「かざす」だけで、名刺交換アプリや画像データ、URLなどをスムーズに認証・ファイル交換することができます。

・ワイヤレス給電機能:13.56MHzの周波数を利用して、電力を供給する機能です。この仕組みによりNFC対応の充電器にスマートフォンを近づけるだけで充電が可能になります。

NFCとFeliCaの違いとは?

NFCにはType A / B / F/ ISO15693の4種類があり、FeliCaはソニーがNFC規格に基づいて開発したType Fに該当します。FeliCaはほかのNFC規格と比べて高速で通信でき、日本国内で交通系ICカードや社員証などで広く採用されています。一方で、欧米ではType Aが主流で、どの規格が使われているかは地域により異なります。

NFCの4つの規格

NFCの主な規格は以下の4つです。

Type A:オランダの企業NXPセミコンダクターズ社が開発し、MIFAREなどに代表される欧米で最も使用されている規格です。交通系ICカードや入館証、会員証などに使われており、比較的安価なため導入しやすい特徴があります。

Type B:アメリカの企業「モトローラ」が開発した規格です。CPUが内蔵され処理が速く、セキュリティも強いという特徴を持ちます。住民基本台帳カードや健康保険証などの政府・自治体・医療機関など、セキュリティと安定性が重視されるところで使われています。

Type F:ソニー株式会社が開発し、日本国内での普及率が高い規格です。FeliCaが代表例で、高速通信と高セキュリティ性が特徴です。SuicaやPASMOなどの交通系ICカードとして多く使用されているほか、社員証、学生証などにも使われています。

ISO15693:国際標準化機関によって定義された規格です。13.56MHzの高周波で通信し、NFCの中では比較的長い距離の通信が可能で、物流や倉庫などにおける商品管理や図書館の蔵書管理などで活用されています。

MIFARE・FeliCaについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
ICカード「MIFARE」とは?誰でもわかる基本と導入ポイントを解説
ICカード「FeliCa」の特徴と導入メリットをわかりやすく解説

NFCのメリット・デメリットとは?

ICカードイメージイラストの入った写真

NFCのメリット

NFCが広く普及しているのは、多くのメリットがあるからです。以下に、主なメリットを3点ご紹介します。

処理速度が速い

NFCは処理速度が速い点が大きな特徴です。Type-Fでは処理速度が約0.1秒となり、対象機器に近づけるだけで瞬時に通信ができます。これにより接続時間を短縮でき、複雑な操作や読み取り待ちといったストレスから解放されます。キャッシュレス決済や改札の入退など、即時性が求められる場面で多く利用されています。

双方向通信が可能

NFCは一方通行ではなく双方向の通信が可能で、デバイス同士が情報をシームレスに送受信できます。この機能により、チケットレス発券やキャッシュレス支払い、データ共有などが迅速に行えます。スマートフォン同士で名刺交換やURLの送受信ができるのも、この特性によるものです。

セキュリティ面に優れている

NFCは通信距離が数cmと短く、外部からの傍受が難しいことからセキュリティ性に優れています。さらに、暗号化で通信内容が安全なコードに変換されたり、カード番号の代わりに一時的なデジタルトークンが使われたりと、悪用されにくい設計になっています。また、パスコードや生体認証によるデバイス認証、決済などの取引時の認証コード、端末に搭載されたセキュアエレメントによって、なりすましや不正アクセスにも対応しています。

NFCのデメリット

NFCには数多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。

通信距離が短い

NFCは数cm以内の非常に近い距離でしか通信できません。Wi-Fiが100m、Bluetoothが10m、赤外線通信でも30cmから1mほどの通信距離であることを考えると、NFCの通信距離はかなり近距離と言えます。通信を行うにはデバイスにかざす必要がありますが、だからこそ、逆に傍受されにくいというセキュリティ面でのメリットにもなっています。

大容量データの通信は不向き

NFCの通信速度は106kbps、212kbps、424kbps、847kbpsと4種類あります。Wi-Fiの最大6.9GbpsやBluetoothの最大24Mbpsと比較してもかなり遅く、動画や画像のような大容量のデータ通信には向いていません。主に少量の文字情報や決済処理などが向いています。

同じ規格同士でしか通信ができない

NFCには複数の規格がありますが基本的に同タイプの規格同士でしか通信できません。ただし、最近では複数の規格に対応するマルチ対応チップや端末も登場しており、互換性の課題は徐々に解消に向かっています。

NFC対応のICカードの活用例

ゲートでICカードをかざす人たち

NFC対応のICカードは、交通系カードから業務効率化まで幅広く普及しています。代表的な活用例をご紹介します。

交通系ICカード

NFCは、SuicaやPasmoといった交通系ICカードとして広く利用されています。タッチするだけで改札を通過でき、利便性とスピードを両立しています。

電子マネー

非接触で情報をやり取りできる特性を活かし、楽天EdyやWAONなどキャッシュレス決済に活用されています。かざすだけで支払いが完了するため、スピーディーかつ衛生的です。

会員証・ポイントカードとして販促に活用

NFCは、ポイント加算や会員情報の管理に加え、グッズや広告物と連携したプロモーションにも活用可能です。タッチ操作でWebページへの誘導やLINE連携アプリを起動することができ、販促やキャンペーン施策に応用できます。多言語表示にも対応でき、インバウンド施策にも有効です。

認証機能で入退室管理、勤怠管理などに活用

NFCの認証機能を活用することで、企業や教育機関における入退室の記録や管理が行えます。受付でのチェックインやIDの認証、扉の開錠など高いセキュリティが必要な場面で活用されています。また、入退室の記録や勤怠ツールとの連携により、効率的な勤務管理が実現できます。

NFCタグで在庫管理・資産管理

個体識別情報やそのほかのデータを記録した小型チップのNFCタグを器具や機械に取り付けることで、在庫管理や備品管理などがスムーズに行えます。図書館の貸出返却記録、レンタル品・機器の貸出記録などに利用されています。

ICカードの導入やカスタマイズについては、専門スタッフがご相談を承っております。「こんな機能を付けたい」「コストや納期は?」「品質やセキュリティについて知りたい」など、詳細のご相談はお気軽にお問い合わせください。

NFC対応のICカードを導入する際のポイント

チェックポイント

NFC対応のICカードを業務に導入する際には、どのような点を事前に確認しておくべきでしょうか。以下に重要なポイントを挙げます。

技術仕様と運用環境の整合性を確認

まず、ICカードを何に利用するのか目的を明確にします。既存の勤怠管理や入退室システム、社員証システムシステムとの連携が必要な場合は、互換性についても確認し、目的に合った規格のICカードを選びましょう。カードの素材やデザインも多種あるため、用途に合ったものを選定することで、効果的な運用が可能になります。

セキュリティ対策を行う

NFCはセキュリティリスクが低いとされていますが、盗聴やデータ盗用のリスクがゼロというわけではありません。機密性の高い情報を扱う場合には、アクセス権を制御したり、内容や保存データのセキュリティレベルにも配慮したりと、不正コピー防止や情報漏洩のリスクなどの対策を講じることが必要です。

システム連携にかかるコストや管理体制なども見据えて計画する

ICカードを新規で導入する場合は、初期導入費用や運用・保守にかかるコストも見込んでおく必要があるでしょう。勤怠管理ソフトなどのシステムやほかのデバイスとの連携をさせる場合は、システム構築や対応機器の購入費用も追加で必要になります。入社・異動・退社時における配布から回収、紛失時の再発行といった管理体制や、社内における周知・管理運用、セキュリティ教育なども総合的に検討する必要があります。

ICカードの導入に際し、システムとの連携やセキュリティ対応については専門知識が必要な場合もあります。「既存システムとの連携可能なICカードは?」「求めるセキュリティレベルに最適な規格が知りたい」といったご相談は、お気軽に以下までお問い合わせください。

まとめ

NFC対応のICカードは、非接触によるスピーディーな操作性、双方向通信、そして高いセキュリティ性など、業務効率化に役立つ多くのメリットを備えています。一方で、通信距離や規格間の互換性といった制約もあるため、導入にあたっては事前に確認と準備が必要です。

ICカードには種類も多く、業務内容や環境に合わせた仕様選定や導入コストの把握には、専門知識が必要な場合もあります。疑問点がある場合は、ICカード事業者など専門家への相談もおすすめです。ICカード導入の際には、本記事も参考にしながら最適な運用方法を見つけてください。

※「FeliCa 」は、ソニー株式会社の登録商標です。
※「MIFARE」は、NXP B.V.の登録商標です。

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