2025.11.01
ICカード「MIFARE」とは?誰でもわかる基本と導入ポイントを解説

電車の改札やキャッシュレス決済、社員証、さらにはイベントチケットなど、私たちの生活に非接触型ICカードはどんどん身近に使われるようになってきています。そんなICカードのなかで「MIFARE(マイフェア)」は、世界中で幅広く利用されている代表的なICカード規格の一つです。
MIFAREは、「FeliCa」と比較されることが多く、それぞれに異なる強みがあります。本記事では、MIFAREカードの基礎知識や特徴、活用シーンから導入の手順まで、丁寧に解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
ICカードの導入やカスタマイズについては、専門スタッフがご相談を承っております。「こんな機能を付けたい」「コストや納期は?」「品質やセキュリティについて知りたい」など、詳細のご相談はお気軽にお問い合わせください。
もくじ
MIFAREカードの仕組みと特徴

MIFAREは、オランダのNXPセミコンダクターズ社が開発した非接触型ICカードの規格の一つで、多岐にわたって世界中で使用されています。ここでは、MIFAREの基本的な仕組みや代表的な種類、そしてFeliCaとの違いについてわかりやすく解説します。
MIFAREとは?
MIFARE(マイフェア)は、「MIkron FARE-collection System」の略称です。NXPセミコンダクターズ社が特許を持つ非接触型ICカードの規格で、国際基準の通信規格「ISO 14443 Type A」に基づいています。カード内部には、ICチップが内蔵されており、専用リーダーにかざすだけで認証やデータの送受信が可能です。MIFAREは、その手軽さ・コスト効率・信頼性の高さから、世界中で広く採用されています。
FeliCaとの違いは?
MIFAREとFeliCaはどちらも非接触ICカードですが、MIFAREは「NFC Type A」に準拠した規格で、FeliCaは、ソニーが開発した「NFC Type F」に分類されます。MIFAREは欧州・アジアを中心に世界各国で導入されている一方、FeliCaは主に日本国内で普及しています。
MIFAREは、カードのラインナップが豊富で、用途や予算、セキュリティ要件に応じて柔軟に選択できます。
一方で、FeliCaは、処理スピードに優れています。また、暗号化やセキュリティ面に優れています。
FeliCaについて詳しい内容はこちらの記事で紹介しています。
関連記事:ICカード「FeliCa」の特徴と導入メリットをわかりやすく解説
MIFAREカードの種類
MIFAREには、使用目的やセキュリティ要件に応じていくつかのシリーズが用意されています。ここでは、代表的な4種類をご紹介します。
・MIFARE Classic
低価格ながら基本的な非接触通信機能を備えており、既存のデバイスやシステムとの互換性が高いことから、広く普及しているモデルです。会員証・社員証・社内入退室管理などに多く採用されています。
・MIFARE Ultralight
一回使い切りや短期用途に特化した超軽量モデルです。容量が小さい分、コストを最小限に抑えられるため、イベントチケットやキャンペーン用クーポン、交通機関の1回乗車券などに利用されています。
・MIFARE DESFire
セキュリティと処理能力を重視したモデルで、高度な暗号化技術を搭載しています。日本では2023年から車検証に、世界各国ではパスポートにも採用されるなど、高い信頼性を求められる業務に活用されています。
・MIFARE Plus
MIFARE Classicとの互換性を維持しつつ、セキュリティ性を強化したモデルです。既存システムをそのまま活かしながら、安全性の高いカードとして、公共交通機関や小売業などで使用されています。セキュリティとコストのバランスが優れたモデルといえます。
ICカードの導入にあたり「どのICカード規格を選べば良いかわからない」「コストや納期が知りたい」といった疑問がある場合は、専門家までお気軽にお問い合わせください。
MIFAREのメリット・デメリットとは?

MIFAREを業務や施設に導入する際に知っておきたいのが、メリットとデメリットです。コスト・導入しやすさ・対応システムなどといった強みについて、また導入の際の注意点や制限について整理します。
世界中で使用できる
MIFAREは「Type A」に準拠しており、世界各国で利用されています。日本国内ではFeliCaが主流ですが、MIFAREは、欧州、アジア、中南米、アフリカなどで広く導入されており、交通機関や学校、企業、行政機関などさまざまなシーンで使われています。国際的に多くの認証端末やアプリケーションとの互換性があり、海外拠点のある企業やグローバル展開を予定している事業者にとっては、安心して導入することができます。
コストパフォーマンスが良い
MIFAREは種類が豊富なため、導入用途とコストから見た選択肢が多くあります。それゆえコストパフォーマンスが優れたタイプもあります。また、機能を絞って選択できるため、運用負担やランニングコストも含めて長期的な視点で見てもコストを抑えることができます。
さまざまな形状へ組み込める
MIFAREはカード型だけでなく、リストバンド型・キーホルダー型・ラベル型・タグ型など、さまざまな形状に加工できる点も大きな特長です。イベント会場ではリストバンド、工具・備品の管理にはタグ、会員証にはキーホルダータイプなど、用途に応じた形状を選択できます。さらに、耐久性や防水性、柔軟性を加えて加工することもできるため、幅広いシーンで活用が可能です。
導入時に気を付けたいデメリットは?
MIFAREカードには多くの利点がある一方で、導入前に注意しておきたい点もいくつかあります。
まず、FeliCaと比較すると、通信速度やメモリ容量においてやや劣るタイプが存在します。そのため目的に応じてモデルを選ぶ必要があります。ただし駅の改札のように素早く大容量の処理が求められるような用途でなければ、通信速度も実用上問題にはなりません。
さらに、MIFAREはタイプごとにセキュリティレベルに差があります。しかし、近年は暗号化技術を備えた製品が登場しており、適切な製品選定を行えば十分なセキュリティが確保できます。
MIFAREの活用例

MIFAREは、交通系ICカードやキャッシュレス決済だけでなく、入退室管理・勤怠記録・会員証やポイントカード・イベントチケット・学生証・備品管理など、ビジネス・教育・自治体などあらゆる分野で活用されています。
ここでは代表的な活用シーンをご紹介します。
交通系ICカード
日本国内では主にFeliCaが使われていますが、海外の多くの国ではMIFAREが交通系ICカードとして使われています。たとえば、ロンドンの「Oysterカード」や、シンガポールの「EZ-Linkカード」などは、MIFAREの技術がベースです。MIFAREは国際規格なので、海外の複数都市での共通利用も可能になります。
電子マネーなどのキャッシュレス決済
MIFAREは海外では電子マネーとしても幅広く利用されています。交通用途とキャッシュレス機能を一体化させ、通勤・通学・買い物のすべてを一枚で完結させる運用も積極的に行われています。日本国内ではFeliCaが主流ですが、NFC対応のスマートフォンや決済端末の普及に伴い、MIFAREを利用したプリペイド方式やポイント決済サービスが増加傾向にあるため、今後は国内でも増加していく可能性があります。
会員証やポイントカード
MIFAREは、会員証やポイントカードのIC化にも適しています。顧客情報の管理や会員の来店履歴や購買履歴の蓄積により、データに基づいた販促活動やパーソナライズされたサービス提供を実現できます。さらに、SNSアカウントと連携させることで、Webクーポンや特典を配布するなどの販促活動も可能になります。
コンサート・イベントなどの電子チケット
「MIFARE Ultralight」はコストを抑えたシンプルな規格のため、短期・一時利用に適しており、電子チケット用途でも多く採用されています。かざすだけでスムーズに入場処理ができるため、受付業務が効率化し、待機列が短縮されるメリットがあります。
また、紙チケットと比べて偽造リスクが低く、再発行や盗難の心配も軽減される点もイベント運営側にとって大きな利点です。さらに、イベント後のアンケートやリピーター特典の配布といった販促への連携など、マーケティング施策へもつなげやすくなります。
学生証
MIFAREは学生証としても普及が進んでいます。ID認証用だけでなく、図書の貸し出しや食堂での決済など、多機能型カードとして利用されています。教員側の管理業務が効率化されるため、教育現場におけるICカード導入はますます進んでいくでしょう。
社員証・勤怠管理など
MIFAREはビジネスシーンでも活用されています。社員証としての機能はもちろん、オフィス扉の開閉、出勤・退勤の管理、セキュリティエリアへのアクセス制御などが1枚のカードで一元管理することが可能です。
さらに、勤怠管理システムと連携させることによって、タイムカードとしての機能に加え、残業時間の自動集計や従業員の勤怠管理ができます。また、MIFAREでパソコンへのログイン認証も可能です。
MIFARE導入時のチェックポイント

MIFAREカードを導入する際には、事前確認が導入成功のカギとなります。ここではいくつか確認しておくべきポイントを挙げます。
システムとの互換性を確認する
まずは、使用するシステムとの「互換性」を確認しておきましょう。MIFAREはType Aという規格が採用されていますが、MIFAREのIDカードとFeliCa対応のリーダーでは読み取りができません。MIFAREへ切り替えるにはリーダーの変更やシステムの改修が必要になるケースもあります。導入前に使用中の機器やソフトウェアがMIFARE対応か、チェックすることが大切です。
セキュリティ対策
次に、セキュリティ性能が用途に適しているかを検討することも大切です。MIFAREカードには複数のタイプがありますが、それぞれのセキュリティレベルが異なります。安易にコストを抑えてしまうとセキュリティが求めるレベルに達さない可能性もあるため、適切なタイプを選択し、安心して運用できるようにしましょう。
導入コストを算定しよう
MIFAREの導入では、カードの購入費だけでなくランニングコストも発生します。一般的に、必要枚数分のカード本体費用、リーダーや周辺機器、システム設計やカスタマイズ費用、運用保守、入退職や紛失時などの追加発注費用などが挙げられます。複数拠点で使う場合などは想定以上にコストがかかることもあるため、費用を可視化し、予算を想定したうえで導入しましょう。
MIFARE対応のICカードを作成する際の流れ

MIFAREカードを導入する際は、まずICカード制作をしている専門の事業者に問い合わせをし、仕様の相談や見積もりの依頼をすることからはじまります。ここでは、政策の流れを4ステップに分けて説明します。
ICカード制作事業者に相談・見積もりを取る
導入を検討し始めたら、まずICカード制作を行っている専門の事業者へ相談・問い合わせをしましょう。「仕様がまだ決まっていない」「何から始めればいいかわからない」といった段階でも、多くの事業者では気軽に相談に対応してくれます。事前に用途を伝え専門家からの提案を受けることで、適切な規格の選定や希望するコストでの作成が実現します。無料での相談・見積もり対応が可能な事業者を選ぶと安心です。
カード仕様・デザインの決定
見積もりを確認し依頼する事業者が決まったら、カードの材質や形状、厚み、印刷デザインなどの仕様を決定します。MIFAREカードは、社員証や学生証、会員カードなど用途に応じてロゴや写真、QRコードの印刷が可能で、デザインの自由度が高いのが特長です。「自社でデザインデータを用意する」「デザインも依頼する」と2通りの方法があります。デザインを依頼する場合は、複雑なデザインだと費用が高くなる可能性があるので、事前にすり合わせをしておきましょう。
ICカード印刷→納品
仕様が決まったら、いよいよ印刷工程に入ります。印刷方法には、「UVオフセット印刷」「シルク印刷」「UVインクジェット印刷」などいくつかあり、それによって納期が異なります。納期は最短でも1週間~数週間を見込んでおきましょう。
また、枚数やデザイン加工によっては、納期が延びることもあります。特急対応や小ロット対応を行っている事業者もあるため、スケジュールや予算に応じた柔軟な対応が可能かどうかも確認しましょう。
テスト運用→全社展開へ
導入直後は、いきなり全社で運用を始めるのではなく、まずは一部の部署でテスト運用を行うことが推奨されます。リーダーのトラブルや、読み取りの不具合、ユーザー側の運用上の問題などを確認し、問題がなければ、本格導入・全社展開に進みます。テストをすることで、スムーズで安定したICカード運用が実現できます。
ICカードの作成について、費用や流れなどを詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
※関連記事:ICカードを作成したい!具体的な方法やコストなどを徹底解説
MIFARE対応ICカードの導入は専門家へ相談を

ICカードは、社員証や会員証、イベントチケットなど幅広い場面で活用ができ、ビジネスの生産性向上にも役立つため導入を検討する方も多いでしょう。しかし、実際に導入する際には、既存のシステムとの互換性、導入コスト、セキュリティレベルなどを総合的に判断する必要があります。導入にあたっては、専門知識が多く求められるため、ICカード制作事業者に相談することをおすすめします。経験豊富な専門家に相談することで、自社のニーズに合った最適なカード提案を受けられ、スムーズに導入ができるでしょう。
ICカードの導入やカスタマイズについては、専門スタッフがご相談を承っております。「こんな機能を付けたい」「コストや納期は?」「品質やセキュリティについて知りたい」など、詳細のご相談はお気軽にお問い合わせください。
まとめ
MIFAREは国際規格に対応し、コストパフォーマンスや汎用性の面で優れたICカード規格で、交通系ICカードやキャッシュレス決済から、社員証や学生証、イベントなど幅広い場面で活用されています。MIFARE対応のICカードを上手く活用すれば、顧客サービスの向上や業務の効率化も実現できます。一口にMIFAREといっても、セキュリティやコストが異なるいくつかの種類があります。導入成功のためにも、目的、用途に合わせた最適な規格を選ぶようにしましょう。
※「FeliCa 」は、ソニー株式会社の登録商標です。
※「MIFARE」は、NXP B.V.の登録商標です。




