2025.11.01

ICカードのセキュリティ|仕組みや取るべき対策とは?

ICカードのセキュリティ

クレジットカードや交通系ICカード、キャッシュレス決済カードなど、ICカードは私たちの生活に欠かせないものになっています。さらに、オフィスや店舗では入退室管理や在庫管理、ロッカー管理などにも利用されるようになり、その用途は年々広がっています。

利便性が高い一方で、ICカードは個人情報や入退室ログ、決済データといった重要な情報を扱うため、セキュリティが何よりも重要になります。本記事では、ICカードの基本的な仕組みからセキュリティリスク、導入・運用時の対策を解説します。

ICカードの導入やセキュリティ強化については、専門スタッフがご相談を承っております。「こんな機能を付けたい」「コストや納期は?」「どのカードを選ぶべき?」など、詳細のご相談はお気軽にお問い合わせください。

ICカードとセキュリティの基本知識

カードを指さす男性

まずはICカードとはどのようなものか、その仕組みや種類を確認しましょう。なぜセキュリティが重要なのか、初心者にもわかりやすく解説します。

ICカードとは?

ICカードとは、内部に小型のIC(集積回路)チップを搭載し、情報の記録や処理を行えるカードのことです。カード単体では電力を持ちませんが、リーダーライターと通信することで電力が供給され、データの読み取りを行います。個人認証が可能となるため決済、入退室管理などさまざまな場面で活用が可能です。ICカードにはセキュリティ対策が施されていることから、偽造が困難であり不正利用が少ないことが特長です。

ICカードの種類

ICカードの通信方法は「接触型」と「非接触型」の2種に分類されます。

・接触型ICカード

端末に差し込み、物理的に接触して通信するタイプです。銀行のキャッシュカードや社員証などに使われています。通信の安定性は高いものの、読み取りに時間がかかる点やICチップの摩耗による耐久性の課題があります。

・非接触型ICカード

リーダーライターにかざすだけで通信する方式です。SuicaやICOCAなどの交通系カード、電子マネー、社員証や入退室カードなどに広く使われています。利便性が高く衛生的、さらに暗号化通信を備えた規格を選べばセキュリティ面も高くなります。

ICカードの種類について詳しくは以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
※関連記事:ICカードの種類は?活用例や選び方のポイントなどを紹介!

ICカードの利用例と守るべき情報

ICカードは銀行カード、クレジットカードやタッチレス決済、交通系ICカード、社員証や学生証といった幅広い用途で使用されています。そのためカードには氏名、所属部署、社員番号などの個人情報や、口座番号・取引情報といった決済情報、入退室ログなどが記録されています。

これらが漏洩すると、プライバシー侵害や金銭被害、企業の信用失墜といった深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、情報を守る仕組みと運用ルールが不可欠です。

ICカードのセキュリティリスク

ICチップ

ICカードは利便性が高いことから私たちの生活に広く浸透し、ICチップにはさまざまな重要な情報が記録されています。ICカード使用に当たって発生する代表的なリスクを理解しておくことで、適切な対策につなげることができます。

スキミング

ICカードは、ICチップに保存されている情報を抜き取る「スキミング」の標的になることがあります。スキミングにはさまざまな方法があります。

お店などで荷物を預けた際に財布などから離れた隙にカードを抜き取られ、スキミングされることがあります。

また、接触型ICカードの場合は、「スキマー」と呼ばれる特殊な機械をリーダーライターに取り付け、カードの情報を読み取ることができます。非接触型ICカードでもセキュリティの低い規格であれば、非接触型のスキマーをある程度の距離まで近づけるだけで情報を抜き取ることも可能です。

不正コピー

ICカードから盗んだ情報をコピーされてクローンカードが作成される可能性があります。不正コピーが成功すると、第三者に入退室を許してしまったり、サービスを悪用されたりするリスクがあります。

非接触型であっても、セキュリティコードが流出していた場合、そのまま正しいカード情報として認証され、不正利用されることもあります。本人確認の比較的甘いプリペイドカードへの残高チャージや、モバイルペイメントアプリに登録して使用されるケースもあります。

なりすましや不正利用

ICカードは本人でなくとも認証できてしまうというデメリットがあります。カードを盗難・紛失した場合、紛失に気付いて利用停止をするまでの間は、第三者が本人になりすまして利用することが可能です。盗難されたカードで入退室や決済のセキュリティが突破されてしまった場合は、個人や企業に大きな被害を及ぼす可能性があります。

ICカードのセキュリティ対策

ICカードとスマホを持つ手

企業や店舗がICカードを導入する際、スキミングや不正利用のリスクを防ぐために、どのような対策が必要でしょうか。導入側と利用者側に分けて解説します。

ICカードに備わっているセキュリティ

ICカードは偽造されにくい仕様になっており、以下のようなセキュリティ対策が施されています。

・暗号化技術

ICカードの通信では暗号化が行われ、第三者による不正な読み取りを防ぎます。代表的な方式にはAES(高度暗号化標準)やMIFARE DESFireがあり、複雑な暗号化アルゴリズムでデータを保護しています。これによりスキミングや盗聴のリスクを大幅に低減できます。

・認証方式

ICカードには多様な認証方式があります。暗証番号を入力して本人確認をするPINコード認証、パスワードや生体認証を組み合わせる二要素認証、使い捨ての認証コードであるワンタイムパスワード認証といった方式を用いて、カードが盗難された場合でも第三者が容易に利用できないように工夫されています。

・アクセス制御

ICカードにはアクセス権を設定できます。例えば「一般社員は入退室ログのみアクセス可能」「管理者のみシステム設定にアクセス可能」といった制御が可能です。

導入側が行うべき対策

ICカードを導入する際、導入企業や店舗、施設にもセキュリティ対策が必要です。1つは、「カード規格の選定」です。ICカードは規格によってセキュリティレベルが異なります。安易にコストを落とすと、望むセキュリティレベルに達さない可能性があります。高いセキュリティレベルを求めるなら、FeliCaやMIFARE DESFireなど、暗号化技術が進んだ規格を採用するとよいでしょう。

さらに、カード更新の頻度やルール、利用ログの監視の担当者や頻度、不正アクセス検知の場合のマニュアルなどの運用ルールをあらかじめ決め、対策を立てておくことも重要です。また、カードの取り扱いルールを明文化し、導入側のスタッフ全員に、紛失時の対応フローの周知を徹底する必要もあります。

利用者が取るべき対策

カードの利用者側のセキュリティ対策も重要です。カードをむき出しで持ち歩かず、ケースや財布に入れて携帯するのはもちろん、スキミング防止ケースやシールド機能付きホルダーを活用するのも良い方法です。

万が一、紛失・盗難が発生したら、すぐに管理者やカード発行元に連絡し、利用停止手続きを行いましょう。

ICカードの導入にあたってのセキュリティ強化については、専門スタッフがご相談を承っております。「自社が必要とするセキュリティレベルに合うカードを知りたい」「セキュリティの高いICカードを導入したい」など、詳細のご相談はお気軽にIC Card Factoryまでお問い合わせください。

紛失・盗難時の対処法

不正利用イメージ

さまざまな対策をして備えていたとしても、トラブルが起こる可能性はゼロではありません。万が一、ICカードのセキュリティインシデントが発生した場合は、迅速かつ組織的な対応が必要です。ここでは具体的な対応フローと法的側面について解説します。

素早くカード会社に連絡する

盗難や紛失が発生したら、できるだけ早く管理者やカード発行会社に連絡し利用停止手続きを行い、必要に応じて再発行を行いましょう。サポートの内容や再発行の費用・期間は、発行会社や機関によって異なるため、確認が必要です。盗難保険などがついている場合は、適用期間の確認も行いましょう。

不正利用が疑われる場合の対応

企業や店舗内で不正利用や情報漏洩があった場合は、内容によっては原因究明・対策が終わるまで業務停止などという可能性もありえます。それにより、社会的信用も失われてしまう可能性もあるため、速やかな対処が必要です。

不正利用の疑いがあった場合は、入退室ログや決済記録等を調査し、関係部署やシステム担当へ速やかに報告します。

調査の結果、不正利用が確認された場合は、暗号化方式や運用ルールの見直しが必要です。

また、情報漏洩が認められた場合は、専門調査機関への調査依頼や、顧客対応、不正利用の損失補填や再発行などの手続きが必要になります。

紛失や不正利用に関連する法律や規制

セキュリティインシデントは、企業において単なる業務上の問題にとどまらず、法律上の責任にも直結する重大な事象です。特に、情報の紛失や不正利用は、以下の法律や規制に該当する可能性があります。

また、自社内で情報漏洩や不正アクセスが発生した場合、企業の管理体制が問われ、場合によっては損害賠償請求や行政処分の対象となることもあります。

・個人情報保護法

社員情報、顧客の決済情報、入退室ログや利用履歴などは「個人情報」として保護の対象です。個人情報保護法では、こうした情報を適切に取得・管理・利用することが義務付けられています。たとえば、アクセス権限の管理が不十分で情報漏洩が発生した場合、企業の管理責任が問われ、行政指導や損害賠償請求につながる可能性があります。

・不正アクセス禁止法

システムやデータに対する不正なアクセス、情報の無断コピーや不正利用は、不正アクセス禁止法により明確に禁止されています。この法律に違反すると、刑事罰や罰金が科される場合があります。たとえ社内の従業員であっても、権限を超えた情報利用は違法行為とみなされる可能性があるため、企業はアクセス管理や監視体制を徹底する必要があります。

セキュリティの高いICカードの選び方

ICカードとスマートフォンとタブレット

非接触型ICカードを導入する際には、単に利便性だけでなく、セキュリティ面もしっかり確認することが重要です。ここでは、導入時に気を付けるべき比較ポイントを整理して解説します。

セキュリティレベルの高い規格を選ぶ

ICカードには、使用される規格によってセキュリティ性能が異なります。よく使われる規格として、FeliCa、MIFAREがあります。

・FeliCa

日本で広く使われるFeliCaは、「ISO/IEC 18092」に加え、日本独自の規格「JIS X 6319-4」に準拠しています。カード自体に高い暗号化技術が組み込まれており、出荷時から「出荷鍵」を設定することで、カードの輸送や発行の段階でも安全性が確保されています。 セキュリティが高いと言われているFeliCa ですが、低コストを実現した「FeliCa Lite」「FeliCa Lite-s」など、セキュリティが弱いタイプもあります。

FeliCaについてより詳しくまとめた記事がございます。
※関連記事:ICカード「FeliCa」の特徴と導入メリットをわかりやすく解説

・MIFARE

国際規格「ISO/IEC 14443 Type-A」に準拠しており、世界的に広く利用されています。ただし、MIFAREの中でも「MIFARE Classic」はセキュリティの脆弱性が指摘されており、重要情報の管理には注意が必要です。「MIFARE DESFire」はMIFAREの派生規格であり、DESやAESなどの高度な暗号化方式を採用しているため、従来のMIFARE Classicに比べセキュリティレベルが大幅に向上しています。

MIFAREについてより詳しくまとめた記事がございます。
※関連記事:ICカード「MIFARE」とは?誰でもわかる基本と導入ポイントを解説

ICカードを選ぶ際には、セキュリティレベルと導入コストのバランスを検討することが大切です。特に個人情報や入退室管理など重要な情報を扱う場合は、暗号化や認証機能が十分に備わった規格を選ぶことが推奨されます。

セキュリティ認証の有無をチェックする

ICカードや関連システムの安全性を確認する方法として、ISO/IEC規格やセキュリティマークの取得状況をチェックすることも有効です。

「ISO/IEC規格」は国際規格で、ISO/IEC 15408において、国際的なセキュリティ評価基準に基づく認証がなされています。

また、「JIS規格」は「ISO/IEC規格」とほぼ同等の内容を持つ日本国内の基準です。国内での導入や法令対応を重視する場合はこちらも確認しておくと安心です。

このような認証やマークがあるカードやシステムを選ぶことで、企業としての信頼性を高め、セキュリティリスクの軽減にもつながります。

まとめ

ICカードは便利で多用途に使える反面、セキュリティリスクも抱えています。導入時に適切なカード規格を選び、暗号化・認証・アクセス制御といった仕組みを活用しながら、運用ルールと利用者教育を徹底することが欠かせません。

また、インシデント対応や法的リスクを踏まえて備えておくことで、安心して長期的に運用できます。

ICカードの導入やカスタマイズについては、ICカード制作の専門会社 IC Card Factoryがご相談を承っております。「こんな機能を付けたい」「コストや納期は?」「品質やセキュリティについて知りたい」など、詳細のご相談はお気軽にお問い合わせください。

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