2025.11.01

ICカード式タイムカードのメリットは?費用や導入の流れを解説

ICカード式タイムカード

ICカードをタイムカードとしても利用する「ICカード式タイムカード」。2019年4月の働き方改革により、「客観的な記録による労働時間の把握」が義務付けられた※1ことも背景に、導入を進める企業が増えています。

ICカード式タイムカードを導入すれば、勤怠管理業務の大幅な効率化やより正確な出退勤時間の記録が期待できます。一方で「導入費用はどれくらいかかるの?」「ほかの勤怠管理方法と比べてどんな特徴があるの?」などの疑問を持つ方も多いはずです。

そこで本記事ではICカード式タイムカードのしくみから特徴、導入メリット、費用などについて解説します。ICカードをタイムカードとして活用を検討している方はぜひ参考にしてください。

※1出典:労働安全衛生規則第52条の7の3(厚生労働省)

IC Card Factory はICカード制作の豊富な実績があり、ICカード式タイムカード制作についても随時ご相談をお受けしています。ICカード式タイムカードの導入のサポートも行っております。以下までお気軽にお問合せください。

ICカード式タイムカードのしくみ

ICカード式タイムカードを持つ手

ICカードとは、データの記録・処理などを実行するIC(集積回路)チップが内蔵されたカードを指します。「ICカード式タイムカード」とは、タイムカードの機能をICカードに搭載したものです。専用リーダーにICカードを読み込ませるだけで、連携する勤怠管理システムに出退勤時刻が記録されます。

ICカードは主に「接触型」と「非接触型」に分けられます。

  • 接触型ICカード:カード表面に組み込まれたICチップと専用リーダーを接触させて通信を行うタイプのICカード
  • 非接触型ICカード:カード内部に搭載されたICチップおよびアンテナで電波を送受信して通信を行うタイプのICカード

接触型・非接触型ともにICカード式タイムカードとしての利用が可能ですが、主流は非接触型ICカードです。

非接触型ICカードに使われているICチップはいくつか種類があります。中でも、代表的な規格である「FeliCa(フェリカ)」と「MIFARE(マイフェア)」は必ず押さえておきましょう。

  • FeliCa:国内で最も普及している通信技術(規格)。セキュリティの高さや通信速度の速さが特徴。ソニー株式会社が開発。
  • MIFARE:世界で最も普及している通信技術(規格)。種類の多さや低コストが特徴。オランダの企業・NXPセミコンダクターズ社が開発。

非接触型ICカードでICカード式タイムカードを作成する際には、搭載したい機能や自社のセキュリティ基準などに応じて、最適な規格を選定する必要があります。

ICカードの基本情報については、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事:ICカードの種類は?活用例や選び方のポイントなどを紹介!

ICカード式タイムカードと従来の勤怠管理方法との違い

ICカード式タイムカードを使った勤怠管理システムと、ほかの勤怠管理の方法との違いを押さえましょう。

勤怠管理の方法 ICカード式タイムカード(勤怠管理システムと連携) 紙のタイムカード エクセル
メリット
  • 打刻作業がスピーディーかつ簡便
  • 不正・改ざんのリスクが低い
  • 集計・修正の手間が少ない
  • 導入コストが低い
  • リテラシー問わず誰でも使える
  • 導入コストが低い
  • 使い方がシンプル
デメリット
  • 導入・運用コストが一定かかる
  • ICカードの紛失リスクがある
  • 集計・修正に手間がかかる
  • 転記ミスや不正のリスクがある
  • 誤入力や改ざんのリスクがある
  • 法改正の度に計算式や管理項目の更新が必要
導入をおすすめ
する事業者

打刻や勤怠管理業務の手間を減らしたい事業者

不正・改ざんを抑止したい事業者

従業員数の少ない事業者 低コストで勤怠管理の工数を削減したい事業者

このように各勤怠管理の方法によってメリット・デメリットは異なります。方法ありきではなく、自社の実情に応じて最適な方法を選ぶようにしましょう。

ICカード式タイムカードのメリット

メリットイメージ

ここではICカード式タイムカードを導入する3つのメリットを深掘りしていきます。

簡単な操作性のため職場に普及しやすい

ICカード式タイムカードでは、カードを専用リーダーに読み込ませるだけで簡単かつスピーディーに打刻をすることができます。エクセルや勤怠管理システムを立ち上げる必要もありません。

新たなシステムの導入にあたっては、そのシステムの操作性が複雑そうであればあるほど、従業員は抵抗感を抱きやすいもの。一方、ICカードタイムカードはそのシンプルな操作性から、ITリテラシー問わず誰でもすぐに使い始められます。そのため、導入時のハードルも低く、導入後もすぐに社内浸透することでしょう。

勤怠管理業務を効率化できる

たとえば紙のタイムカードでは、一人一人のタイムカードに打刻された出退勤時間を確認し、エクセルなどに転記をして集計する手間が発生します。集計後も転記ミスがないか、何度か確認作業も必要でしょう。

一方、ICカード式タイムカードの場合は、連携する勤怠管理システムが自動で集計および計算を行います。転記・集計作業が不要になることで勤怠管理業務が大幅に効率化され、労務管理担当者の負担軽減につながるでしょう。

打刻データの正確性がより担保される

紙のタイムカードやエクセルなど手書きや手入力による方法では、入力者による「時刻の読み間違いによる誤入力」や管理者による「転記・集計ミス」といったヒューマンエラーのリスクが少なからず存在します。さらには、本人以外の者が打刻を行う「不正打刻」も比較的容易に行えてしまいます。

一方、ICカード式タイムカードでは、カードを読み込ませるだけで打刻時刻が自動で記録されるため、誤入力や転記ミスといったヒューマンエラーのリスクを大幅に軽減し、より正確な打刻データを記録・管理することができます。併せて、(カードの貸し借りをしない限りは)カードを持つのは本人だけのため、不正打刻も抑止できます。

ICカード式タイムカードのデメリット

デメリットイメージ

メリットも多いICカード式タイムカードですが、デメリットもいくつか存在します。導入にあたってはここで解説する2つのデメリットもしっかり把握しておきましょう。

リモートワーク時の対応が必要

ICカード式タイムカードは専用リーダーにカードを読み取らせて打刻をするしくみです。したがって、専用リーダーの用意がない場所では、カードで打刻ができません。リモートワークや出張が多い企業の場合、打刻漏れや打刻修正の手間が一定発生することでしょう。

そのような企業の場合、持ち運びのできる専用リーダーの導入がおすすめです。これにより従業員は場所を問わずカードを用いて打刻ができるようになります。

ICカードの紛失・盗難リスクが一定ある

ICカード式タイムカードは社員証も兼ねている場合が多く、日頃から従業員が持ち歩いて使用します。したがって、ほかの勤怠管理の方法と比べて、紛失・盗難時のリスクは高くなってしまいます。

対策としては、たとえば「紛失・盗難時の対応をまとめたルールの周知・徹底をする」「カードはリール付のカードホルダーに入れて持ち歩く運用にする」などが挙げられます。これらの対策により、紛失・盗難のリスクを大きく軽減できることでしょう。

ICカード式タイムカード導入にかかる費用相場

計算機を持つ手

ICカード式タイムカードの導入にあたっては「ICカード式タイムカード本体」「専用リーダー」「勤怠管理システム」の3つのコストが発生します。それぞれの費用目安は次のとおりです。

  • ICカード式タイムカード本体:1枚当たり約150円~。ただし、社員証としての機能も兼ねる場合は約400円~
  • 勤怠管理システムの専用リーダー:1台あたり10万円~
  • 勤怠管理システム:クラウド型※1の場合は1人当たり月額約300円~。オンプレミス型※2の場合は導入時に約30万円~150万円程度

上記はあくまで目安であり、発注する枚数や搭載する機能、規格などにより導入費用は大きく異なります。より正確な費用を知りたい場合は、専門事業者に見積もりを依頼しましょう。

※1 ベンダーが提供するネットワークを利用するシステム

※2 社内で保有するネットワークやシステムを利用するシステム

ICカード式タイムカード導入の流れ

ステップイメージ

ではICカード式タイムカードの導入が決まった場合、どのような手順で導入・運用するのでしょうか。ここでは具体的な流れを紹介します。

システム・機器を選定する

まずは、ICカード式タイムカードを運用するためのハードおよびソフトの選定を行います。

ICカードとカードリーダー

ICカードを用意する方法は「外注」もしくは「社内で作成」の2つです。後述するとおり、タイムカードとして使用するICカードの作成には、ICチップの規格や勤怠管理システムなどに対する専門知識が不可欠なため、まずは専門事業者への外注を検討しましょう。一方、社内で作成する場合には、規格や搭載機能、デザインなどの仕様を決めたうえで、カードプリンターを用意して印刷を行います。

また新たにカードを発行せずとも、既に従業員が使用している交通系ICカードや社員証などをタイムカード式ICカードとしてそのまま利用できる可能性もあります。既存のカードの活用を検討する場合は、専門事業者に問い合わせをしてみましょう。

ICカードと併せて、カードリーダーの選定も行います。カードリーダーは主に以下3つのタイプに分けられます。

  • USB接続型:PCやタブレットに接続するだけで利用できるタイプ。持ち運びがしやすい点が特徴
  • タイムレコーダー型:PCやタブレットとの接続不要で利用できるタイプ。マウスやタップ操作が不要
  • スマホ・タブレット型:専用アプリをカードリーダーとして用いるタイプ。有線のインターネット回線のない環境でも利用できる

タイプを問わず、製品によって対応できるICカード(規格)は異なります。事前に導入を検討しているカードとの互換性を確認しておきましょう。

ICカードを作成する際に押さえておきたいポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事:ICカードを作成したい!具体的な方法やコストなどを徹底解説

勤怠管理システム

ICカード式タイムカードと連携させる勤怠管理システムも選定しましょう。勤怠管理システムの選定ポイントは以下のとおりです。

  • 自社の課題にアプローチできる機能を有しているか
  • 導入予定のICカード(規格)と互換性はあるか
  • 導入・運用コストは適正か
  • サポートが充実しているか
  • システムの操作性は優れているか
  • 最新の法改正に対応しているか

とくに導入の前提となる「ICカードとの互換性」については必ず確認しましょう。

テスト運用を行い、マニュアルを整備

全社で本格運用する前に、一部の部署で1か月程度のテスト運用期間を設けましょう。このテスト期間に「設定ミスや運用上のトラブルの発見」「管理者の運用フローの確認」などをすることで、全社展開前にトラブルの芽を潰し、スムーズに社内浸透を図ることができます。テスト運用において発生した問題は、原因を追求し、必要に応じて運用マニュアルに反映させていきます。

また勤怠管理システムによっては、無料トライアル期間を設けているものもあります。トライアル期間を活用してテスト運用をすることで、コストを抑えることができるでしょう。

従業員への教育を行い、本格運用する

テスト運用後に全社展開する際には、事前にICカード式タイムカードおよび勤怠管理システムの機能や操作方法について、従業員に周知をしておきましょう。社内説明会や研修の開催、マニュアルの配布を行うことで、現場の理解も得るようにします。
従業員への説明時には「どれだけ手間が減るか」や「どれくらい業務時間が削減されるか」など、具体的なメリットを提示することがポイントです。それにより、現場での利用が促進され、よりICカード式タイムカードが浸透しやすくなります。

ICカード式タイムカードは働き方改革にも対応

2019年4月より、働き方改革の一環で「客観的な記録による労働時間の把握」が法的義務になりました。事業者は労働者の労働日ごとの出退勤時間や入退室時刻の記録などを把握しなければなりません。労働時間を把握していない場合、法令違反是正勧告の対象になってしまいます(罰則規定はなし)。※2

この「客観的な記録による労働時間の把握」のために有効なのが、ICカード式タイムカードの活用です。ICカード式タイムカードは、紙のタイムカードやエクセルでの管理など、手書きや手入力で出退勤時間を記録する方法と比べて不正や改ざんのリスクの低い点が特徴です。そのため、ほかの方法と比べて、より正確な労働時間を記録することができます。

なお、カードと連携する勤怠管理システムの中には、法改正に合わせて自動アップデートされるものもあります。そのようなシステムを選ぶことで、より管理者の負担なく、働き方改革の法令に則った勤怠管理を実現することができます。

※2出典:労働安全衛生規則第52条の7の3(厚生労働省)

ICカード式タイムカードの作成時は専門事業者に相談しよう

商談する人たち

ICカード式タイムカードの導入にあたっては、導入目的や自社のセキュリティ基準に応じたICチップの規格や搭載機能を選定する必要があります。連携する勤怠管理システムの機能やカードとの互換性、サポート体制なども考慮しなければなりません。

このようにICカードと勤怠管理システム、両者に関する検討項目は多岐に渡ります。そのため、最適なICカード式タイムカードの選定にあたっては、両者に精通した専門事業者に相談をするのがおすすめです。

IC Card Factoryは、ICカード制作の専門会社として、長年の実績を誇ります。ICカード式タイムカードや連携する勤怠管理システムについても提供が可能です。導入をご検討されている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

ICカード式タイムカードの最大のメリットは、勤怠管理業務の効率化でしょう。転記・集計の手間がなくなることは、担当者にとって大きなメリットになり得ます。またカードの使い方も簡便なため、導入も比較的スムーズに図れるでしょう。さらに働き方改革で法的義務となった「客観的な記録による労働時間の把握」にも、より正確に対応できることが期待できます。
業務効率化と法令順守を両立できるICカード式タイムカードを、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。

※「FeliCa」は、ソニー株式会社の登録商標です。

※「MIFARE」は、NXP B.V.の登録商標です。

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